第16話 シグナルを出したのに動かない!初心者審判が身をもって学んだ「連携」の大切さ

前回の記事では、審判員同士が試合中に使っている「シグナル」について書きました。

インフィールドフライの場面や、タイムプレーが考えられる場面など、審判員は声だけではなく、手の合図を使ってお互いに情報を伝えています。

私自身も、

「審判員同士で、こんなに細かく情報を共有しているんだ」

と知って、シグナルを覚えるようになりました。

ところが、シグナルを覚えたばかりの頃、とんでもない失敗をしてしまいました。

「この場面では、このシグナルを出します!」

ある試合のクルーミーティングで、私は審判員のみなさんに、

「この場面になったら、このシグナルを出します」

と確認しました。

もちろん、自分としては、

「今回はちゃんと準備できた!」

と思っていました。

そして、いざ試合が始まります。

すると、なんと本当に、そのシチュエーションがやってきました。

「来た!」

私は、確認していた通り、3塁へカバーに入るシグナルを出しました。

これで準備はOK。

……のはずでした。

シグナルを出したのに、なぜか動かなかった

その後、本当に3塁へカバーに入るような打球が外野へ飛んでいきました。

ここで私は、3塁へ向かって走るはずでした。

ところが――。

私は、その場に立ったまま、ボールを目で追っていただけでした。

自分でも、なぜそうなったのか分かりません。

シグナルは出した。

打球も見ていた。

でも、肝心の「動く」ということが、すっぽり頭から抜けてしまっていました。

今思えば、

「シグナルを出したから、自分の仕事は終わった」

くらいの感覚だったのかもしれません。

クルーに助けてもらいました

当然、そのままでは3塁のカバーがいません。

すると、機転を利かせてくれたクルーの審判員が、すぐに戻ってきて3塁のカバーに入ってくれました。

おかげで、試合は何事もなく続けることができました。

私は何も起こらなかったことにホッとしましたが、試合が終わってからクルーで振り返りをすると、この出来事が話題になりました。

すると先輩から、

「来てくれると思ったので、その場にいたままだから戻ってきましたよ~」

と、笑いながら言われました。

みんなで笑いましたが、私は、

「本当にそうだ……」

と、改めて反省しました。

シグナルは「出して終わり」ではない

この経験で、私は大切なことを学びました。

シグナルは、ただ合図を出すためのものではありません。

その合図を見て、自分もクルーも次の動きをするためのものです。

つまり、

「シグナルを出す」→「そのシグナルに合わせて動く」

ここまでがセットだったのです。

私はシグナルの意味を覚えることばかりに意識が向いていて、その後に何をするのかまで頭に入っていませんでした。

前回の記事で書いた、

「審判はクルー全体で試合を見る」

ということを、身をもって経験した出来事でした。

先輩から教えてもらった「3流・2流・1流」

そして、先輩からこんな言葉も教えてもらいました。

「メカニクスを覚えていないのは3流。
覚えて、その通りに動こうとするのが2流。
1流は、クルーがメカニクス通りに動かなかったときに、カバーできる柔軟性を持つこと。」

これを聞いた私は、

「私はまだまだ3流だな……」

と思いました。

まずはメカニクスを覚える。

そして、覚えた通りに動けるようになる。

さらにその先には、もし誰かが予定通りに動けなかったとしても、別の審判員がカバーできるような判断力と柔軟性がある。

審判の世界には、そこまで考えた連携があるんだと知りました。

助けてもらうだけではなく、いつか助けられるように

このときの私は、クルーの先輩に助けてもらいました。

でも、いつまでも助けてもらってばかりではいけません。

いつか自分も、

「誰かが動けていない」

「予定していたカバーに入れない」

という状況が起きたときに、

「じゃあ、自分が行こう」

と判断できる審判になりたいと思いました。

そのためには、まず基本のメカニクスをしっかり覚えること。

そして、実際の試合で何度も経験すること。

まだまだ失敗ばかりですが、こうやって一つずつ覚えていくしかないんだと思います。

失敗して初めて分かった「連携」の大切さ

今回の失敗は、今思い返しても少し恥ずかしいです(笑)。

でも、あのとき失敗したからこそ、

「シグナルは出して終わりじゃない」

「審判は一人で試合を見ているわけではない」

ということを、本当に実感できました。

審判を始めたばかりの頃は、自分の判定で精一杯です。

「間違えないようにしなければ」

「ちゃんと動かなければ」

と、それだけで頭がいっぱいになります。

でも、少しずつ経験を積んでいくと、

「自分の動きが、クルー全体の動きにつながっている」

ということが分かってきます。

私もいつか、誰かを助けられる審判になれるように、これからも一つずつ経験を積んでいきたいと思います。

次回は、今回も出てきた**「カバー」について、実際の試合で誰がどこに動くのか、初心者の頃に私が戸惑った経験**を書いてみたいと思います。

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