前回の記事では、初めて4人制の審判を経験したときのことを書きました。
3人制と4人制では、同じプレーでも審判員の動きや役割が変わります。
最初の私は、それがなかなか理解できず、3人制で身についた動きをしてしまっていました。
その経験から、
「審判は、自分だけ正しく動けばいいわけではない」
ということを学びました。
では、複数の審判員は、どうやってお互いの動きや役割を確認しているのでしょうか。
その一つが、**「シグナル」**です。
試合前に「シグナル」を確認する
審判員は、試合が始まる前にクルーミーティングを行います。
そこで、
「この打球は誰が担当するのか」
「この場面では誰がカバーに入るのか」
「ランナーが出たときは、どう動くのか」
など、その試合での基本的な役割を確認します。
その中で、どんな場面で、どんなシグナルを使うのかも確認します。
例えば、インフィールドフライのシチュエーションになったときには、左胸に触れることで、
「今、インフィールドフライのシチュエーションです」
とクルー全体に知らせます。
また、球審が3塁を指せば、
「このプレーでは、球審が3塁のカバーに入ります」
という意味になります。
その場合、1塁塁審がホームをカバーします。
さらに、2アウトでタイムプレーが考えられる場面では、左手首を指して、
「タイムプレーを意識しておこう」
と確認します。
こうして、審判員同士でその時の状況を共有していきます。
試合中は「声」だけでは伝わらない
試合中、審判員同士はいつでも声を掛け合えるわけではありません。
特にプレー中は、大きな声で打ち合わせをすることなどできません。
だからこそ、
目で見て分かるシグナル
を使って意思疎通をします。
選手のプレーを邪魔しないようにしながら、審判員同士で、
「自分はここを担当する」
「このプレーは注意しておこう」
と共有しているわけです。
審判を始めたばかりの私は、
「こんなところまで細かく決まっているんだ」
と驚きました。
私が最初に覚えたシグナル
選手時代の私は、インフィールドフライのルール自体は知っていました。
そのため、
「インフィールドフライのシグナルは覚えておこう」
と思い、これは早い段階で覚えました(笑)。
ところが、もう一つのシグナルについては、意味をよく理解していませんでした。
それが、タイムプレーのシグナルです。
シグナルの出し方は覚えていても、
「そもそも、タイムプレーになったら何に気をつければいいんだろう?」
ということが分かっていませんでした。
そこで、先輩に質問しました。
「タイムプレーでは、何を見ればいいんですか?」
私が、
「タイムプレーが起こるときには、どんなことに気を付けなければいけないんですか?」
と聞くと、先輩が教えてくれました。
審判員マニュアルには、タイムプレーについて、
「走者が得点したかどうかを判断するにあたり、走者がタッグされる前に本塁に触れたのか、タッグされた後に本塁に触れたのかを見極めなければならない」
という趣旨の説明があります。
つまり、簡単に言えば、
「ホームベースを踏んだのが先なのか、それともタッグされたのが先なのか」
を判定しなければならないということです。
これを聞いて、
「なるほど。タイムプレーでは、ただホームを見るだけじゃないんだ」
と、初めて具体的に理解できました。
そこで大切になるのが「声」
さらに先輩から、こんなアドバイスをもらいました。
「正しいジャッジをするために必要なのは『声』だよ」
私は少し意外でした。
すると先輩は、
「ほかの審判員は、その審判の声を聞いて判断するから、タイムプレーが起こる場面では大きな声でジャッジすることが大事なんだよ」
と教えてくれました。
なるほど。
私はそれまで、
「自分が正しく判定すれば、それでいい」
と思っていました。
でも、そうではありません。
タイムプレーのように、複数の審判員が関わる場面では、自分の判定を声に出して伝えることも、クルーにとって大切な仕事なのです。
「声」がクルーを助ける
それを聞いてから、私はとにかく大きな声を出すことを意識するようになりました。
「アウト!」
「セーフ!」
必要な場面では、できるだけはっきり、相手に聞こえる声を出す。
自分では、
「ちょっと大きすぎるかな?」
と思うくらいでした。
でも、先輩から教わったことで、
「声を出すことも審判の技術の一つなんだ」
と考えるようになりました。
これまでの記事でも、「ゴーアウト」のときに声を出す意味について書きました。
今回のシグナルの話を通して、改めて、
審判は、動きだけではなく、声や合図でもお互いに情報を伝え合っている
ということが分かりました。
審判は「一人で判定する」のではない
審判を始めたばかりの頃の私は、
「審判=自分がプレーを見て判定すること」
だと思っていました。
でも、経験を積むにつれて、
「審判はクルー全体で試合を見るものなんだ」
と少しずつ分かってきました。
誰がどこを見るのか。
誰がカバーするのか。
そして、どんなシグナルや声で情報を共有するのか。
そう考えると、審判員の動きには一つ一つ意味があるんだと感じます。
初めて4人制を経験したときも、私は「誰がどこを担当するのか」で戸惑いました。
そして今回、シグナルを覚えることで、その役割を審判員同士で共有する仕組みまで少し見えてきました。
まだまだ覚えることはたくさんあります。
でも、知らなかったことを一つずつ理解していくと、審判の面白さも少しずつ増えていきます。
次回は、シグナルにまつわる私の失敗談について書きたいと思います。


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