第14話 3人制に慣れたはずなのに動けない!初めて4人制審判をやって戸惑ったこと

前回までの記事では、球審としての「立ち位置」や「トラッキング」について書いてきました。

どこに立つのか。

どうやってボールを見るのか。

一つずつ覚えてきたことで、少しずつですが、審判としての動きも分かってきたように感じていました。

ところが、そんな私に、また新しい壁がやってきました。

それが、4人制の審判です。

私の連盟は基本的に3人制

私のグループでは、基本的に3人制のメカニクスを採用しています。

ただし、大きな大会や決勝戦などでは4人制を採用することがあります。

さらに、もっと上の大会になると4人制が中心になるため、時には4人制の練習をさせてもらうこともあります。

私も、審判として経験を積んできたところで、初めて4人制を経験することになりました。

もちろん、何も知らずに試合に入ったわけではありません。

事前にメカニクスを何度も読み込んで、

「今回は大丈夫だろう」

と思って試合に臨みました。

ところが……。

頭では分かっていても、体が動きません。

3人制と4人制では、同じ場面でも動きが変わる

初めて4人制を経験した試合で、私は1塁塁審を担当しました。

ここで、3人制と4人制の違いを少しだけ説明します。

3人制では、ランナーがいない場面で外野に飛んだ打球を判断するとき、センター方向を基準にして、左側は3塁塁審、右側は1塁塁審が担当します。

例えば、左中間方向へフライが飛んだ場合、3塁塁審が外野へ出て打球を判定します。

その間、1塁塁審は内野に入り、打者走者の1塁ベースの触塁を確認し、その後の2塁でのプレーに備えます。

私は、それまでこの動きを何度も経験してきました。

ところが、4人制になると、ここが変わります。

4人制では、2塁塁審が加わることで、外野の飛球判定を3人で分担します。

そのため、ランナーがいない場面で左中間方向へ打球が飛んだときには、2塁塁審が外野の打球を判定しに行き、3塁塁審が2塁のプレーに備えてカバーに入ります。

つまり、1塁塁審である私が、3人制のときと同じように内野へ入ってしまうと、役割が重なってしまいます。

これが、私にとって大きな問題でした。

分かっているのに、いつもの動きをしてしまう

「4人制では自分は動かない」

頭では分かっていました。

試合前にも確認しました。

それでも、実際に打球が飛ぶと、

いつものように体が動いてしまうのです。

「飛んだ!」

と思った瞬間、3人制の感覚で内野へ入ってしまいます。

すると、先輩から、

「その動きは違うよ!」

と指摘されます。

一度ではありません。

何度も同じことを言われました。

「分かっているのに、なぜ動いてしまうんだろう?」

自分でも不思議でした。

「ダブルジャッジ」になる可能性もある

しかも、ただ動きが間違っているだけではありません。

自分が3人制と同じように動いてしまうことで、同じプレーを別々の審判が見ることになり、異なる判定をしてしまう「ダブルジャッジ」につながる可能性があります。

つまり、審判は「とりあえず自分も見に行けばいい」というわけではないのです。

誰がどのプレーを担当するのか。
誰がカバーに入るのか。
誰が動かずに残るのか。

そこまで決まっているからこそ、複数の審判がいても、できるだけ同じプレーを重複して判定しないようにしています。

審判の動きには、一つ一つ意味がある。

3人制を経験してきた私は知っているつもりでした。

でも、4人制を経験してみて、改めてその奥深さを感じました。

先輩の言葉に救われました

何度も「違う」と指摘されると、正直、

「自分は審判に向いていないのかな」

と思ってしまいます。

そんなとき、別の先輩が私にこんな言葉をかけてくれました。

「それだけ3人制に慣れてきたってことだね」

この言葉には救われました。

「間違えている=できていない」

としか考えていなかった私に、

「3人制の動きが体に染みつくほど練習してきたから、無意識にそちらの動きが出ているんだ」

という見方を教えてくれたからです。

そう考えると、少し気持ちが楽になりました。

そして、

「じゃあ、4人制の動きもこれから覚えていけばいいんだ」

と思えるようになりました。

「できない」のではなく、「まだ慣れていない」

初めて4人制を経験して、私は大切なことを学びました。

メカニクスを本で読んで、

「なるほど、こう動くのか」

と頭で理解することと、

実際の試合で打球が飛んだ瞬間に、その通りに動けることは別物です。

これは、これまでの記事でも同じでした。

ストライクゾーンもそうでした。

球審の立ち位置もそうでした。

トラッキングもそうでした。

知識として知るだけではなく、実際に何度も経験して、体で覚えていく必要がある。

4人制の経験は、そのことを改めて教えてくれました。

いろいろなメカニクスに挑戦したい

この経験をしてからは、3人制だけではなく、4人制のような別のメカニクスにも挑戦してみたいと思うようになりました。

もちろん、最初からうまくできるわけではありません。

間違えることもあります。

先輩から注意されることもあります。

でも、それは「できない」のではなく、

「まだ慣れていない」

だけなのかもしれません。

46歳から審判を始めた私にとって、これはとても大きな気づきでした。

新しいことを始めるときは、今までできていたやり方が邪魔をすることもあります。

でも、そこで諦めずに、何度もやってみる。

そうやって少しずつ、自分の中に新しい動きを身につけていく。

4人制の審判は、私にそんなことを教えてくれた経験でした。

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