前回の記事では、高めから落ちてくるカーブの判定に悩んだ話を書きました。
先輩から「最後まで目を切らずにボールを見ること」を教えてもらい、少しずつですが、自分なりの見方ができるようになってきました。
ところが、ある試合で球審をしていたとき、先輩からこんなアドバイスをもらいました。
「もう少し捕手に近づいたほうがいいよ」
最初は、
「え? 今でも十分近いと思うけど……」
というのが正直な感想でした。
ところが、これが私の球審としての判定を考えるうえで、とても大きな気づきになりました。
球審と捕手の距離って、こんなに近いの?
球審は、捕手の後ろに立って投球を見ます。
そのときの基本的な構えの一つが、**「スロットスタンス」**です。
私も審判を始めてから、この言葉自体は知っていました。
ハンドブックにも、スロットスタンスでは捕手との距離を適切に保つことが示されています。
ところが、実際に自分が構えてみると、無意識のうちに捕手から少し離れていたようです。
試合後、先輩が実際に立って見せてくれました。
「ここまで近づくんだよ」
その位置を見て、私は思わず、
「こんなに近づくの?」
と驚きました。
自分が今まで立っていた位置より、かなり捕手に近かったからです。
「そんな離れたところからホームベースは見えるの?」
そこで先輩から、こんなことを言われました。
「そんな離れたところからホームベースは見えるの?」
確かに、少し離れた位置から見ると、捕手の体やミットがホームベースを隠してしまうことがあります。
そして、先輩は続けてこう言いました。
「見ているのと、見えているのは似て非なることだからね」
この言葉には、ハッとしました。
私はそれまで、
「ちゃんとボールを見ているから大丈夫」
と思っていました。
でも、実際には「見ようとしている」だけで、ホームベースや投球の通過する位置がしっかり見えていなかったのかもしれません。
これは、私にとってかなり大きな気づきでした。
MLBの球審がしている、あの動き
さらに先輩から、こんな話も聞きました。
「MLBの球審を見ていると、右手を捕手の左肩に添えるような仕草をしていることがあるでしょ?」
確かに、テレビでメジャーリーグの試合を見ていると、球審が捕手との距離を確認するような動きをしているのを見かけることがあります。
先輩によると、
「あれは捕手との距離感を確認しているんだよ」
とのことでした。
なるほど。
球審は、ただ捕手の後ろに立っているだけではありません。
投球をしっかり見るために、自分と捕手との距離も意識しているのです。
それだけ、球審にとって「どこに立つか」は大切なことなんだと感じました。
ストライクゾーンが安定しなかった理由
ここで私は、あることに気づきました。
それまでの記事でも書いたように、私はストライクゾーンの判定にずっと悩んでいました。
高めのボール。
低めのボール。
高めから落ちてくるカーブ。
同じようなコースでも、判定に迷うことがありました。
もちろん、経験不足もあります。
でも、
「そもそも、正しく見るための位置に立てていなかったのでは?」
と思うようになりました。
どれだけ一生懸命ボールを見ても、見る位置が悪ければ、ホームベースや投球の通過する位置を正確に見ることは難しくなります。
「ストライクゾーンを安定させたい」
と思っていた私ですが、その前に、
「正しく見るための場所に立つ」
ことが必要だったのです。
それからは「距離」を意識するようになりました
それ以来、球審をするときには、捕手との距離をなるべく意識するようになりました。
「今日は近すぎないかな?」
「逆に離れすぎていないかな?」
と、自分の位置を確認してから構えるようにしました。
もちろん、毎回完璧にできるわけではありません。
捕手によって体格も違いますし、構え方も違います。
だからこそ、その都度、自分が投球をしっかり見ることのできる位置を意識することが大切なのだと思います。
「見る」ためには「立ち位置」が大切
審判を始めたばかりの頃の私は、
「ストライクゾーンを覚えなければ」
「ボールをしっかり見なければ」
とばかり考えていました。
でも、先輩から教えてもらったことで、
「何を見るか」だけではなく、「どこから見るか」も大切なんだ
と分かりました。
そして、今でも印象に残っているのが、
「見ているのと、見えているのは似て非なること」
という言葉です。
これは球審だけではなく、審判をするうえで、とても大切なことなのかもしれません。
一生懸命見ているつもりでも、正しく見えていなければ正しい判定にはつながりません。
だからこそ、
正しい位置に立つ。
しっかり見る。
そして、最後まで判定する。
この積み重ねが、初心者の私には大切なんだと感じました。


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