第19話 チーム審判員と一緒に試合をしたら、思わぬところで自分の成長を感じた話

前回の記事では、3塁へのカバーが必要な場面で、状況を見て自分から動くことができた経験を書きました。

審判を始めたばかりの頃は、決められた動きを覚えるだけで精一杯でした。

それが少しずつ、

「今はどこを見ればいいのか」

「誰がカバーするのか」

を考えられるようになってきました。

そんな中で、今度は自分とは違う経験値の審判員と一緒にクルーを組むという経験をしました。

「チーム審判員制」という仕組み

審判をしていると、ときどきチーム審判員制で試合を行うことがあります。

これは、球審を私たちのような審判員が担当し、塁審には各チームから1名ずつ審判を出してもらうという方法です。

チームから参加してもらう審判員の中には、経験豊富な方もいれば、審判を始めたばかりの方もいます。

普段とは違うメンバーでクルーを組むことになるので、私はこうした方々と一緒に審判をするのも、審判の面白さの一つだと感じています。

もちろん、経験の違う審判員と一緒に試合をするからこそ、試合前のミーティングがとても大切になります。

「この場面では誰が打球を追うのか」

「誰がどの塁をカバーするのか」

など、できるだけ事前に確認して試合に入ります。

私が球審を担当した試合で起きたこと

ある試合で、私が球審を務め、チーム審判員の方々と一緒にクルーを組みました。

ランナーはいません。

打者が打った打球は、レフト方向への飛球になりました。

3塁塁審はすぐに外野へ向かい、飛球の判定をします。

1塁塁審は、打者走者が1塁を触ったことを確認しました。

ここまでは問題ありません。

ところが、その後、打者走者がそのまま2塁へ向かって走り始めました。

「あれ?2塁を見る人がいない」

私は球審としてプレーを見ながら、

「次は2塁のプレーだな」

と思いました。

ところが、1塁塁審はそのまま1塁にとどまっています。

その瞬間、

「このままだと、2塁を誰も見られない」

と気づきました。

考えている暇はありません。

気がついたときには、

体が勝手に2塁へ向かって走っていました。

そして、2塁で起こったプレーをしっかり見て、判定することができました。

「自分がカバーできた!」

ジャッジを終えた瞬間、私は、

「自分がカバーできた!」

と、嬉しくなりました。

以前の記事では、3塁へカバーに入った経験を書きました。

今回は、球審として試合全体を見ながら、

「このままだと、次のプレーを見る人がいない」

と判断して、自分から動くことができたのです。

バックネットから試合を見ていた先輩も、この場面を見ていて、

「よくカバーしたね」

と笑いながら声をかけてくれました。

その一言が、とても嬉しかったです。

ルールやメカニクスだけではなく、「人」を見る

この経験で、私はまた一つ大切なことを学びました。

審判には基本となるメカニクスがあります。

誰がどの打球を追うのか。

誰がどの塁をカバーするのか。

それを覚えて、正しく動くことはもちろん大切です。

でも、実際の試合では、いつも全員が教科書通りに動けるとは限りません。

経験の浅い審判員と一緒にクルーを組むこともあります。

誰かが動けないこともあります。

そんなときには、

「今、クルーの中で誰がどこを見ているのか」

を考えることも大切なのだと思います。

今回の私の動きも、基本のメカニクスとして決められた動きではありません。

それでも、2塁のプレーを誰もカバーできない状態をそのままにしてしまえば、正しい判定が難しくなってしまいます。

だからこそ、その場の状況を見て、必要なプレーをカバーすることが重要なんだと感じました。

「自分の判定」から「クルーの判定」へ

審判を始めたばかりの頃は、

「自分が間違えないようにしなければ」

と、それだけで頭がいっぱいでした。

でも、少しずつ経験を積むうちに、

「自分だけが正しく動けばいいわけではない」

ということが分かってきました。

クルー全体で試合を見る。

誰かが困っていたらカバーする。

そして、みんなで正しい判定につなげる。

以前、先輩から、

「1流は、クルーがメカニクス通りに動かなかったときにカバーできる柔軟性を持つこと」

と教えてもらいました。

今回のプレーは、その言葉を少しだけ実感できた瞬間でした。

審判は一人ではできない

今回、一緒にクルーを組んだチーム審判員の方も、決して故意に動かなかったわけではありません。

審判を始めたばかりなら、次に何をすればいいのか迷ってしまうこともあります。

私自身も、以前は同じようなことを何度も経験しました。

だからこそ、今度は少しずつですが、自分が周りを見て動けるようになってきたことが嬉しく感じられました。

まだまだ先輩に助けてもらうことのほうが多い私ですが、いつかは、

「この人がいてくれると安心する」

と思ってもらえるような審判になりたいと思います。

今回の2塁へのカバーは、そんな目標に向かって、自分がほんの少し前進できたと思えた出来事でした。

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