前回の記事では、シグナルについて書きました。
審判員同士で合図を送り合い、誰がどのプレーを担当するのかを共有しています。
そして私は、シグナルを出したのに、その後の自分の動きを忘れてしまうという失敗も経験しました。
その経験から、**「審判はシグナルを出すだけではなく、その後にどう動くのかまで考えておかなければならない」**と学びました。
そんな私に、今度は少しだけ成長を感じられた出来事がありました。
左中間への長打
子どもの試合に参加したときのことです。
私は1塁塁審を担当していました。
ランナーはいません。
打者が打った打球は、左中間を抜ける長打になりました。
すると、3塁塁審をしていた先輩が、
「ゴーアウト!」
と大きな声を出して、外野へ打球を追っていきました。
「この打球は私が外野へ行って判定します」という、審判員同士の合図です。
私はすぐに、
「OK!」
と返事をしました。
そして、内野に入り、まずは打者走者が1塁をきちんと触ったかを確認します。
ここまでは、これまで何度も経験してきた動きでした。
そのとき、次のプレーが起きました
打者走者はそのまま2塁へ進み、さらに3塁を目指しました。
ここで私は、一瞬迷いました。
「あれ? 3塁って、球審と私のどちらがカバーするんだっけ?」
前回の記事で、審判員のカバーについて勉強したばかりなのに、いざその場面になると頭の中が真っ白になりました。
そこで、とっさに球審の位置を確認しました。
すると、球審はホームにとどまったままでした。
おそらく、打者走者がそのままホームまで走ってくる、いわゆるランニングホームランになる可能性も考えて、ホームを離れなかったのだと思います。
その瞬間、私は思いました。
「これは、自分が3塁へ行くしかない!」
とにかく3塁へ走りました
私はそのまま3塁へ向かって走りました。
外野手からの送球も3塁へ向かってきます。
そして、3塁でプレーが起こりました。
私は送球と走者の動きをしっかり見て、
「セーフ!」
とジャッジしました。
判定を終えて、1塁へ戻ろうとしたところ、外野から戻ってきた先輩が私に声をかけてくれました。
「よく走ったね」
その一言が、とても嬉しかったのを覚えています。
「少しは成長したかな」と思えた瞬間
実は、3塁へ向かうときも、最初から自信満々だったわけではありません。
「本当に自分が行っていいのかな?」
という迷いはありました。
でも、
「今、3塁を見る人が必要だ」
と判断して、動くことができました。
前回の記事では、シグナルを出したのに、その場に立ったままになってしまいました。
今回は、完璧ではなかったものの、その場の状況を見て、自分が必要な場所へ動くことができたのです。
先輩の「よく走ったね」という言葉を聞いて、
「少しは審判が上手になったのかな」
と、初めて思えたプレーでした。
審判は「覚えた通り」だけではない
この経験から、また一つ学びました。
もちろん、審判の動きには基本となるメカニクスがあります。
誰が打球を追うのか。
誰がどの塁をカバーするのか。
それぞれに決まりがあります。
でも、実際の試合では、いつも教科書通りにいくとは限りません。
誰かが少し遅れることもあります。
予定していた場所に行けないこともあります。
そんなときには、その場にいる審判員が状況を見て、必要な場所をカバーすることも大切です。
以前、先輩から、
「1流は、クルーがメカニクス通りに動かなかったときにカバーできる柔軟性を持つこと」
と教えてもらいました。
今回のプレーは、まだまだ未熟な私でしたが、その言葉を少しだけ実践できたような気がしました。
小さな「できた」がうれしい
審判を始めたばかりの頃は、
「次はどこに行けばいいんだ?」
と迷ってばかりでした。
でも、何度も試合を経験していると、少しずつですが、
「このプレーなら、ここを見なければ」
「今は自分がカバーしなければ」
と考えられるようになってきます。
今回も、完璧ではありませんでした。
それでも、自分で考えて動けたことが、とても嬉しかったです。
46歳から審判を始めた私にとって、こうした**小さな「できた」**の積み重ねが、審判を続ける楽しさなのかもしれません。
まだまだ先輩たちに助けてもらうことばかりです。
それでも、いつか自分が誰かを助けられる審判になれるように、これからも少しずつ経験を積んでいきたいと思います。


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