第7話 「テイクワン」だと思ったら「テイクツー」?選手目線では分からなかった野球のルール

審判を始めたばかりの頃、あるプレーを見て、

「あれ? 思っていたのと違う……」

と思ったことがありました。

それは、今まで選手として何度も経験してきたプレーでした。

でも、審判として見ると、まったく違って見えたのです。

サードゴロの送球がベンチに入った

ある試合で、打者がサードゴロを打ちました。

打者走者は1塁へ向かって一生懸命に走ります。

三塁手もアウトにしようと1塁へ送球します。

ところが、その送球がそれてしまい、ボールはそのままベンチの中へ入ってしまいました。

その瞬間、私は、

「テイクワンだ」

と思いました。

「テイクワン」というのは、簡単にいうと、走者に1個の塁の進塁が認められることです。

この場合なら、

「1塁へ走っている途中だったから、1塁からさらに1つ進んで2塁だろう」

と、私は考えました。

ところが、先輩の判定は違いました。

「テイクツー!」

私は、

「えっ、テイクツー?」

と驚きました。

「なぜ2つ進めるの?」

結果的には、打者走者は2塁まで進むことができました。

私も結果だけを見れば、

「2塁まで進むんだな」

と分かります。

でも、

「なぜテイクワンではなく、テイクツーなんだろう?」

という疑問が残りました。

というのも、私は選手として野球をしていたとき、同じような場面になると、

「1塁に行こうとしていたんだから、1つ進んで2塁まで」

という感覚で考えていたからです。

そこで、試合が終わったあと、先輩に聞いてみました。

「どこをスタート地点にするか」が違っていた

すると、先輩から、

「このプレーは、投球当時を起点にして考えるんだよ」

と教えてもらいました。

つまり、

「送球がベンチに入った瞬間に、走者がどこにいたか」

ではなく、

「ピッチャーが投球したとき、打者走者がどこにいたのか」

を基準にして考えるのです。

この場合、投球されたときには、まだ打者はバッターボックスにいます。

そこを起点にすると、

バッターボックス → 1塁 → 2塁

となるため、2つの塁、つまり**「テイクツー」**になるのです。

「なるほど!」

と、私は初めて理解しました。

知っているつもりのルールでも、実は知らなかった

この出来事で、私はあることに気づきました。

野球を選手として長くやってきたので、

「野球のルールなら、それなりに知っている」

と思っていました。

でも、それはあくまで選手として野球をしてきた中で身につけたルールの知識だったのです。

審判として試合を見始めると、

「このプレーは、何を基準に判断するのか?」

ということまで考えなければなりません。

今回も、私は「今どこにいるか」を見ていました。

でも、実際には**「どの時点を基準にするのか」**が重要だったのです。

この違いには、とても驚きました。

「もっとルールを勉強しよう」と思ったきっかけ

この出来事をきっかけに、

「もっと野球のルールを勉強しなければ」

と思うようになりました。

選手だった頃には、深く考えなかったことでも、審判になると、

「なぜそうなるのか?」

を知っておかないと、実際の試合で判断できません。

そして、ルールを勉強していくと、

「野球って、こんなところまで細かく決まっているんだ」

と、これまでとは違う野球の面白さも見えてきました。

まだまだ「選手目線」だった

今振り返ると、この頃の私は、まだまだ選手の目線で野球を見ていたんだと思います。

「走者がどこまで走ったか」

「ボールがどこへ行ったか」

という目で見ていました。

でも、審判はそれだけではありません。

「何が起きたのか」
「どのルールが適用されるのか」
「どの時点を基準にするのか」

まで考えて、判定しなければなりません。

46歳から審判を始めた私にとって、これは大きな転機になりました。

「審判って、ただプレーを見るだけじゃないんだ」

そう思うようになったのです。

そして、もっとルールを知りたいと思うようになりました。

このあと、少しずつ審判としての経験を積んでいく中で、私はいよいよ初めて球審をすることになります。

もちろん、そのときも分からないことだらけでした。

次回は、そんな私が初めて球審をした日のことを書いてみたいと思います。

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